都立入試の総合得点1020点の組み立てとESAT-J

通知表とESAT-Jの結果を並べて、手が止まる

三者面談の前の廊下で、保護者の方が通知表のコピーとESAT-Jの結果通知を並べて持っている場面があります。どちらも数字が並んでいるのに、この二つがどう合わさって都立入試の点数になるのか、その場ではなかなか像が結ばない。よくあるのは、内申が足りないという話と英語のスピーキングが低いという話を、別々の心配として抱えたまま面談に入ってしまう場面です。

都立の一般入試は、この二つを同じ土俵の上で足し算します。合計は1020点。今回はその1020点がどう組み上がるのかを、順番にほどいていきます。

1020点の内訳は3つのブロック

東京都教育委員会が公表している令和9年度入学者選抜実施要綱によると、一般入試(第一次募集・分割前期)の総合得点は、学力検査の得点と調査書点の合計1000点に、ESAT-Jの結果を加えた1020点満点です。

ブロックに分けるとこうなります。

学力検査と調査書の比率は学校ごとに決まっていて、7:3の学校なら学力検査700点・調査書300点という配分になります。この700と300に、ESAT-Jの20点が上乗せされる。これが1020点の正体です。

なお、一部の学校は7:3の計算と10:0(学力検査のみ1000点)の計算を両方行い、高いほうを採用します。令和9年度にこの方式の対象として公表されたのは北園高校と武蔵野北高校の2校です(都教委の公表資料より)。第二次募集は6:4と10:0で高いほうを使う仕組みです。

ここで一度、言葉の整理をしておきます。「総合得点」というのは、合否を決めるために学校が並べる数字のことです。学力検査の素点でも、通知表の評定でもなく、学校ごとに決めた配分に読み替えたあとの数字を指します。だから同じ素点でも、7:3の学校と10:0の学校では総合得点の顔ぶれが変わります。まずは自分が受ける学校がどの配分なのかを押さえる。これがすべての出発点になります。

学力検査700点は、素点の満点が500点でも700点になる

ここで多くの家庭が一度つまずきます。学力検査は5教科で、1教科100点の満点なら素点の合計は500点。ところが総合得点に載るときは700点満点に読み替えられます。

計算は比例配分です。5教科の素点合計に700/500を掛ける。つまり素点の1.4倍が学力検査の得点になります。

素点合計425点なら、425×700/500=595点。これが学力検査ブロックの得点です。

この1.4倍という操作は、素点の差をそのまま1.4倍に膨らませます。素点で10点の差は、700点ブロックでは14点の差になる。素点で50点の差なら70点の差です。つまり学力検査は、素点の段階でつけた差が、総合得点の段階でより大きく開くブロックだということです。5教科の素点を1点でも積み上げる意味がここにあります。

逆に言えば、素点の合計が同じなら、700点ブロックの得点も同じです。5教科の間で得意不得意が偏っていても、合計が同じなら学力検査ブロックでは並びます。ただし自校作成問題や傾斜配点のある学校は別で、そちらは教科ごとの重みが変わります。この点は後の節で触れます。

調査書300点は換算内申65点満点から作る

調査書点は、通知表の評定をそのまま足すのではありません。都立の換算内申という形に組み替えてから300点満点に直します。

換算内申の作り方はこうです。学力検査を実施する5教科(国語・数学・英語・社会・理科)の評定は1倍、実施しない4教科(音楽・美術・保健体育・技術家庭)の評定は2倍にして合計します。5教科×1+4教科×2で、満点は65点。9教科の評定がすべて3なら、5×3+4×3×2=15+24=39点になります。

この65点満点の換算内申を、300点満点に読み替えるのが調査書ブロックです。計算は300×換算内申/65。

換算内申52なら、300×52/65=240点。これが調査書ブロックの得点です。

実技4教科が2倍されるという一点は、内申を考えるうえで外せません。5教科の評定を1つ上げるのと、実技4教科の評定を1つ上げるのとでは、換算内申への効き方が違ってきます。音楽・美術・保健体育・技術家庭の通知表を、5教科と同じ重さで見ておく必要があります。

もう少し細かく見ておきます。5教科の評定が1つ上がると、換算内申は1点増えます。実技4教科の評定が1つ上がると、2倍されているので換算内申は2点増えます。65点満点のうちの1点と2点。この差がそのまま300点ブロックに効いてきます。300/65はおよそ4.6ですから、換算内申が1点動くと調査書点は約4.6点動く計算になります。実技4教科の評定を1つ上げることは、換算内申で2点、調査書点でいえば9点前後の動きに相当します。5教科の1教科を1段上げるより、実技1教科を1段上げるほうが調査書点では大きく動く。ここを取り違えている家庭が少なくありません。

ただし、これはあくまで配点の仕組みの話です。実技4教科の評定を上げるのが簡単だという意味ではもちろんありません。定期考査の点数だけでなく、提出物や授業中の取り組みといった観点別評価の積み上げが関わってくるからです。仕組みを知ったうえで、では自分の通知表のどこに手を付けるかを考える。順番としてはそこです。

ESAT-Jは6段階で20点から0点まで

ESAT-Jの評価は6段階で、A20点・B16点・C12点・D8点・E4点・F0点として総合得点に入ります。

AとBの差は4点、BとCの差も4点。1段階下がるごとに4点ずつ減っていき、Fで0点になる。20点満点といっても、実際にはA・B・C・D・E・Fの6つの値のどれかしか取らない仕組みです。

この4点という差をどう見るかは、家庭によって受け取り方が分かれます。学力検査の700点ブロックでいえば、素点に換算すると4点はおよそ2.9点分。1教科の大問1つ分に満たない程度です。ただし、それは学力検査で取り返せるという意味ではありません。ESAT-Jの結果は入試の直前に確定していて、そこで動かせる幅はもう残っていないからです。

ESAT-Jが測っているのは、英語のスピーキングです。英語の学力検査で問われる読む・書く・聞くとは別の検査で、評価の段階も別に付きます。だから英語の学力検査の素点が高くても、ESAT-Jの評価が同じように高いとは限りません。逆も同じです。この二つは連動しないものとして、別々に受け止めておくほうが正確です。

3つのブロックを1回だけ足してみる

具体的な数の組で、1020点満点の計算を最後まで通してみます。

学力検査は425×700/500=595点。調査書は300×52/65=240点。ESAT-Jは16点。

595+240+16=851点。これが1020点満点での位置です。

ここで確かめておきたいのは、851点という数字が「合格ラインまであと何点」という話ではないことです。この計算は、自分の持ち点がどのブロックからどれだけ来ているかを把握するためのものです。595と240と16、この3つの大きさの比を見れば、どこに伸びしろが残っているかが見えます。この例なら学力検査ブロックが最も大きく、次に調査書、ESAT-Jは最も小さい。ただしESAT-Jはもう動かせないので、実際に動かせるのは前の2つということになります。

この例で、もしESAT-JがAだったらどうなるか。16点が20点になるので、合計は855点です。BとAの差は4点。851点と855点、この4点を大きいと見るか小さいと見るかは、置かれた状況によります。ただ、この4点を学力検査で埋めようとすると、素点でおよそ3点。1教科の数問分に相当します。ESAT-Jが確定したあとに残された期間で、その数問を積めるかどうか。順番を逆にして考えると、ESAT-Jの結果が届いた時点でやるべきことが見えてきます。

令和9年度の日程を頭に入れておく

令和9年度の日程も公表されています(都教委の公表資料より)。

推薦の出願は1月8日から1月18日まで、検査は1月26日(火)と27日(水)、発表は2月2日(火)。第一次募集の出願は1月29日から2月4日まで、学力検査は2月21日(日)、発表は3月1日(月)。インフルエンザ等による追検査は3月9日、その発表は3月12日です。出願はインターネット経由で行います。

ESAT-Jの結果はこの日程より前に手元に届いています。つまり出願の時点で、1020点のうち20点分はもう確定しているということです。残りの1000点をどう積むかを、出願までの期間で考えることになります。

日程を逆算すると、第一次募集の出願が始まる1月29日の時点で、学力検査までは3週間あまりです。この時期に新しい単元を開くより、素点の合計を安定させる作業に向いている期間だといえます。出願の前後は書類の準備や学校とのやり取りも入ってきますから、机に向かえる時間そのものが細ります。1月の前半までに、5教科の素点合計をどこまで固められているか。日程を眺めると、そういう見方になってきます。

学力検査の平均点は年度で動く

学力検査の難易度は年度によって変わります。令和7年度(2025年2月実施)の学力検査の平均点は、国語75.0・数学60.4・英語63.7・社会59.9・理科59.2でした(都教委の公表資料より。共通問題の受検者約31,000〜35,000人)。

前年度は国語75.9・数学61.7・英語66.9・社会55.5・理科66.8。理科は66.8から59.2へ、社会は55.5から59.9へと、教科によって動き方が違います。平均点が下がった教科は、素点がそのまま出にくかったということです。

この数字をどう使うか。平均点は自分の得点を評価する物差しにはなりますが、目標点を決める材料にはなりません。学校ごとに受検層が違うからです。平均点を見て一喜一憂するより、素点合計を700点ブロックに読み替えたときにどうなるかのほうが、総合得点の計算には直結します。

たとえば理科の平均点が前年度から7点以上下がっています。もし自分の理科の素点が前年度と同じだったとしても、周りが下がっていれば相対的な位置は上がる。ただし、それは平均点が動いた結果の話であって、自分の素点そのものが上がったわけではありません。700点ブロックに載るのは自分の素点ですから、平均点の上下は、自分の持ち点を直接増やしも減らしもしません。この区別を持っておくと、平均点のニュースに振り回されにくくなります。

自校作成問題と傾斜配点という例外

学力検査は国数英社理の5教科ですが、一部の学校・学科は自校作成問題を使ったり、教科ごとに傾斜配点をかけたりします。自校作成校の一覧は都教委が公表しています。

自校作成問題の学校を志望する場合、700点ブロックへの読み替えは共通問題の学校と同じ考え方では済みません。どの教科にどれだけの配点がかかるかで、同じ素点合計でも総合得点が変わってきます。志望校が自校作成かどうかは、早い段階で一覧で確かめておくべき事項です。

傾斜配点についても同じことがいえます。特定の教科の配点が重い学校では、その教科の素点1点の重みが他教科と変わります。5教科を均等に積むのか、重い教科に時間を寄せるのかで、700点ブロックの伸び方が変わってくる。ここは学校ごとの配点を確認したうえで判断する話で、共通問題の学校と同じ計画をそのまま当てはめるわけにはいきません。

学期ごとに、どのブロックを動かすか

1020点のうち、動かせるのは学力検査と調査書の2つです。この2つは動く時期が違います。そこを学期ごとに分けて考えると、日々の優先順位が立てやすくなります。

4月から7月の一学期は、調査書ブロックの土台ができる時期です。新しい学年の評定は、この学期の定期考査と提出物、授業中の取り組みから積み上がります。換算内申は実技4教科が2倍ですから、5教科と同じ量の提出物が実技4教科にもあるという前提で予定を組みます。この時期に学力検査ブロックを意識するなら、5教科の素点のうち、前学年で落としていた単元を拾い直す作業が中心になります。

8月から12月の二学期は、学力検査ブロックが最も伸びる時期です。模試や過去問で素点合計を測り、700点ブロックに読み替える。この読み替えを月に一度でもやっておくと、自分の持ち点がどう動いているかが数字で追えます。二学期の評定もこの期間でほぼ決まりますから、調査書ブロックの最後の積み上げも同時に進みます。ESAT-Jの結果が届くのはこの時期の終わりごろで、届いた時点で20点分が確定します。

1月から2月は、確定した数字の上で最後の調整をする時期です。出願の前に、換算内申とESAT-Jを確定値で置き、学力検査ブロックだけを動かす。この段階では、新しい参考書を開くより、これまでに間違えた問題を素点に変える作業のほうが、700点ブロックには効きます。

今月やることに落とす

1020点の組み立てがわかったら、次は自分の数字を当てはめる番です。

まず換算内申を出す。直近の通知表から、5教科はそのまま、実技4教科は2倍にして足す。65点満点のうち今どこにいるかがわかります。

次に、直近の模試か過去問の素点合計を700点ブロックに読み替える。425点なら595点、というふうに1.4倍です。

そしてESAT-Jの結果を足す。AからFまでのどれかが決まっていれば、20点・16点・12点・8点・4点・0点のどれかが入ります。

3つを足した数字が、今の持ち点です。この数字は毎月変わります。模試の素点が上がれば700点ブロックが動き、通知表の評定が変われば300点ブロックが動く。ESAT-Jだけは動きません。動く2つに、残りの期間をどう配るか。それが受験生の生活設計になります。

月ごとにやることを分けるなら、こうなります。定期考査の前の2週間は調査書ブロックの季節で、提出物の締め切りと考査の準備を並べます。考査が終わった直後は学力検査ブロックの季節で、模試か過去問を1回分通して素点を出し、700点ブロックに読み替えます。この二つの季節を交互に回すだけで、1年はあっという間です。どちらか一方だけを追いかけると、もう一方のブロックが置き去りになります。

数字の意味を取り違えないために

最後に、よくある取り違えを並べておきます。

1つ目は、換算内申と9教科の素の合計を混同すること。通知表の9教科をそのまま足した数字は、都立の調査書点には使いません。実技4教科を2倍する換算を経て、さらに300/65を掛ける。この2段階を飛ばすと、自分の位置を見誤ります。

2つ目は、ESAT-Jの20点を「英語の得点」と混同すること。ESAT-Jは英語のスピーキングを測る検査ですが、総合得点に入るときは英語の学力検査とは別のブロックとして20点が加わります。英語の素点が上がってもESAT-Jの評価は変わりません。

3つ目は、7:3の学校と10:0の学校を同じ物差しで見てしまうこと。北園高校と武蔵野北高校のように両方の計算をして高いほうを採る学校では、7:3で計算した場合と10:0で計算した場合のどちらが自分に有利かが変わります。調査書に自信があるのか、学力検査に自信があるのかで、有利なほうは逆になります。

4つ目は、1020点満点の数字を、そのまま別の学校の数字と比べてしまうこと。配分は学校ごとに違いますし、受検層も違います。851点という数字は、あくまでその学校の配分で計算したときの自分の位置です。学校をまたいで数字を並べても、意味のある比較にはなりません。

説明会の受付の列で、この1020点の内訳を尋ねられることがあります。そのときに返すのは、たいてい「どのブロックが自分にとって重いか」という話です。配分は学校ごとに決まっていて、家庭が選べるものではありません。だからこそ、自分の数字がどのブロックから来ているのかを正確に持っておくことが、出願までの判断材料になります。入塾前のカウンセリングでは、この3つのブロックを一緒に書き出して、どこから手を付けるかを決めています。